痒みを伴う湿疹が繰り返し出現します。患者さんの多くは、“アトピー素因”を持っています。
アトピー素因とは、アレルギーを起こす物質（アレルゲン）に対して反応しやすい体質の事です。また、正常な皮膚には“バリア機能”が備わっています。
これにより、外からの刺激から肌を守っています。このバリア機能が低下し、アレルゲンが侵入しやすくなっている状態（ドライスキン）もアトピー性皮膚炎の発症につながります。
このような遺伝的な体質に、乾燥した環境や、汗をかく事、引っ掻いて傷を付けたりする事、心的ストレスなどがさらに誘因となるのです。アレルゲンには、ダニ・ハウスダスト・カビ・植物の花粉などがあります。血液検査によって、自分のアレルギーの有無を知る事は、生活の上でも大切な事です。
外用療法
副腎皮質ホルモンの付け薬です。優れた抗炎症作用、免疫抑制作用があります。薬の強さは、5段階に分けられていますが、炎症の強さ、外用する部分によって使い分けます。
副作用が心配で、使用を拒む方もいらっしゃいますが、正しい使い方をすれば、副作用（皮膚が薄くなる、毛細血管が拡張する、感染しやすくなるなど）が出る危険性は極めて低いと言えます。皮膚科医の指導のもと、正しく使用してください。
弱い抗炎症作用を持つ付け薬です。ステロイドに変わる治療法にはなりませんが、ステロイドと上手に組み合わせて使用すると、効果を発揮します。時にかぶれる事があるので注意を要します。
ステロイド以外に効果的な薬が無かった中、アトピー性皮膚炎の新たな治療薬として登場しました。特に、ステロイドではなかなか治らなかった、顔の赤みに効果を発揮します。抗炎症作用を持つ付け薬です。
薬を塗り始めて数日間は、熱感、刺激感をほとんどの方が感じます。この反応が落ち着く頃に赤みや痒みが消失します。
1L 4/13を代表とする炎症性サイトカインを抑制します。また皮膚バリア機能を回復させます（生後6か月～）
ＰＤＥ4阻害剤 炎症性サイトカインの抑制をします。
皮膚バリア機能を回復させます（生後３か月～）
AhR調整薬 炎症性サイトカインの抑制をします（IL-４、IL-17Ａ）
皮膚バリア機能を回復させます（12歳～）
内服療法
抗アレルギー剤、抗ヒスタミン剤の内服により、痒みを抑えます。
アトピー性皮膚炎の悪化の原因である、掻く行動を抑える事はもちろん、痒みによる寝不足やイライラ、ストレスを抑える事にもつながるため、症状によって、増減しながら処方します。重症の場合には、精神安定剤なども併用すると、発疹の軽快につながる事があります。
生物学的製剤の注射療法
今までの治療で十分な効果が得られなかった方に、現在様々な注射が開発されています。
従来免疫を抑制してしまうため、各種検査が必要であった内服や注射とちがい免疫を調節し抑制してしまわないため定期的な検査も必要のない生物学的製剤といわれるものが次々と開発されています。
デュピクセント、ミチーガ、イブグリースなど、それぞれ特徴のある製剤があり、内服、外用でコントロールできない患者さんにおすすめしています。
薬価が高く、受けにくい方もおられますが自己注射を選択することで高額医療費制度の対象により減額可能です。
今までずっとそれが普通であった肌のかさつき、ざらつき、痒みなどが改善し、おそらく経験したことのない快適さを感じると思います。
重症化しコントロールできなくなっている方、ぜひ検討してみてください。
スキンケア
アトピー性皮膚炎は、軽快、増悪を繰り返す疾患です。しっかりとスキンケアを行えば、軽快もしくは寛解の期間をより長くする事ができる方がたくさんいます。
毎日の事なので、面倒に思う方も多いようですが、お肌がデリケートなアトピー性皮膚炎の方だからこそ、十分に取り組んで欲しい事です。
ポイントは3つ。
① 肌を消潔に保ちましょう。
② 刺激を与えないよう気をつけましょう。
③ 保湿を心がけましょう。